先輩たちの声
挑戦のきっかけや成長のプロセス。
パイロットとして働くリアルな姿を
ご紹介します。
誰もがパイロットとして成長できる
機長
×
副操縦士
×
運航乗務員訓練生
お客様や物資、そしてさまざまな人々の想いを届ける社会的使命を担うパイロット。安全運航には多様なスキルが不可欠ですが、それらは初めから身に付いていたものではありません。特別なバックグラウンドを持たない若者が仲間と切磋琢磨しながら成長し、高度な技倆を習得していくのです。
今回は、現役のパイロットと地上配置中の訓練生のクロストークを通じ、彼らのリアルに迫ります。

(ボーイング787機長)
2006年入社。地上配置中は羽田空港にて地上からパイロットへ情報伝達を行う運航支援業務を行い、2011年に副操縦士に任用。2021年に機長昇格。

(エアバス320 副操縦士)
2018年入社。地上配置中は大阪国際(伊丹)空港にて旅客係員を務め、2023年に副操縦士に任用。

(パイロット訓練生)
2025年入社。パイロット訓練生として、現在、整備士養成に関わる業務に従事。

(パイロット訓練生)
2025年入社。パイロット訓練生として、現在、株式に関わる業務に従事。
※取材時点
01 TOPIC / 特別な才能は不要 誰もが挑戦できるパイロットへの道
特別な才能は不要
誰もが挑戦できるパイロットへの道
――まず、皆さんがパイロットをめざしたきっかけを教えてください。

小学生のときに映画『トップガン』を観て、戦闘機に乗りたいと思ったのがきっかけです。そして、航空自衛隊に勤めていた母の勧めで、民間のエアラインのパイロットをめざすようになりました。

テレビドラマ『GOOD LUCK!!』を観たのがきっかけです。パイロットを演じていた木村拓哉さんがかっこいいなと思っていました。でも、私はどうすればパイロットになるか調べるようなことはなく、就職活動のイベントでパイロットの自社養成という仕組みがあると知って、受けてみることにしました。

私もOさんと同じで『GOOD LUCK!!』を観て飛行機にはまりました。幼稚園児か小学校低学年くらいだったと思います。その頃からパイロットに魅力を感じていて、本格的にめざそうと決めたのは中学生の時です。

私は小さい頃からパイロットになりたかったわけではなくて、就職活動を進める中でパイロットが一番自分に合うのではないかと思うようになりました。バスケットボールやハンドボールを長年やってきて、大学でもスポーツ科学を学んだので、判断力や自分を客観視する力が活かせるような気がしていました。ただ、私が新卒の年は新型コロナウイルスの影響で自社養成パイロットの募集がなかったので、別の会社でしばらく働いてから入社しました。
――機長と副操縦士 おふたりの訓練生時代の思い出を教えてください。

同期の仲間にすごく助けられましたね。私は経済学部の出身ですが、航空宇宙が専門だった同期が2人いて、難しいところについてはずいぶん教えてもらいました。ほかにも人によって得意不得意がいろいろとあって、助け合いながら成長した印象です。また、ただ仲がいいだけではなくて、改善すべき点は遠慮なく指摘できる関係でした。私の時は14人のチームで基礎訓練を受けたのですが、彼らは本当に尊敬できる仲間たちで、全員が機長になった今も年に1回、旅行に出かけています。

私たちの世代は、地上配置を終えて海外での訓練が始まったところで、すぐコロナ禍に見舞われました。訓練所からの一次退所も余儀なくされましたが、状況が落ち着くと訓練が再開され、様々な方の協力のもと訓練を受けられるありがたさを実感しながら頑張っていました。

英語はかなり勉強なさったのですか?私は留学経験もあって多少は英語を聞き取れるかなと思っていたのですが、研修でコックピットに入らせていただいたときにATC※の英語が全然わからなくて、このまま訓練に入って大丈夫かなという不安を感じています。

同感です。ATCを聞きながら、自分が呼ばれた時にはすぐ反応して、でも操縦桿はちゃんと握って飛び続けるというのは、本当にマルチタスクの究極形ですよね。将来自分ができるようになっているのか、まったく自信がありません。

それは私も同じでした。留学経験もなかったし、学生時代は将来仕事で英語を使うなんてまったく思っていなかったので、試験に受かってから必死になって勉強しました。ATCも初めは何を言っているのかまったくわかりませんでしたが、何度も聞いているうちに予測ができるようになって、聞こえ方が変わってきました。

私も最初は不安しかなくて、英語が得意な同期にいろいろと助けてもらいました。でも、今このようになんとかなっているので、大丈夫だと思いますよ。準備する努力と経験、やる気があれば。
※ATC:Air Traffic Controlの略で航空機の安全でスムーズな運航を守る「航空交通管制」を指す。管制官が、無線を使ってパイロットに対して指示や情報を与える。

02 TOPIC / 安全運航にはコミュニケーション能力が大切
安全運航にはコミュニケーション能力が大切
――実際のフライトで意識していることはなんですか?

定時運航を意識しながら安全を最優先にフライトをしなければなりませんし、何か通常と違うことがあったらどうしようという不安も当然あります。だからこそ事前の準備を十分に行い、それを確固たる自信へとつなげていくほかないと考えています。
もちろん、実際の運航で思い通りにいかなくても落ち着いていられるかというと、経験が浅いうちは難しいものです。でも、コックピットにいるのは自分ひとりじゃないので、横にいる機長を頼りながら、育ててもらいましたね。ちなみに、渡航先で機長と副操縦士の2人で食事に行くこともよくあります。2人で力を合わせて飛ばすという世界なので、そういうコミュニケーションがあったほうが、スムーズに運航できるように思います。

私の場合は常に機長と2人きりという形になるんですけど、機長はSさんのような人格者ばかりなので、やりにくいと感じることはありません。立場は違えど、ANAのパイロットとして、1人のプロフェッショナルとしてお客様の安全を守らなければならないのは同じなので、必要な時には遠慮せず発言することを意識しています。

コミュニケーション能力の大切さは、私も感じています。自分が副操縦士になった時に、初対面の機長に対して変に緊張していたら、機長の補佐なんてできないし、ATCも聞き取れない気がします。

そうですよね。だから、地上配置中の経験がすごく役立つのではないかと思います。私はANAホールディングスに出向していて、株主総会の準備や運営といった運航とは関わらない業務をしているんですけど、グループ会社や外部の方々とお会いする機会が多くあって、さまざまな方と円滑に話を進められるように努めることで、コミュニケーション能力がかなり伸びたと実感しています。

私は整備士の養成に関する仕事をしているのですが、その中でメインとなっているのがインターンシップの対応で、初対面の人とコミュニケーションをとる機会が多くあります。もちろん整備士志望の方が多いのですが、パイロットも考えているという方も結構いて、学生さんから悩み相談を受けることもあります。

Hさんのようにフライトに近いところで働いていると訓練に入ってから役に立つ知識が多く得られるので、羨ましく思うこともありますね。でも、グループ会社の経営にかかわることなど、同期が知らない世界を知ることができているので、それが強みになることもあるかもしれないと思っています。
――機長と副操縦士のおふたりは、訓練生の時のご自身と比較して、どのようなところが成長したとお考えですか?

目の前の業務だけでなく、フライト全体や周囲の動きを広く見渡す力がついたと思います。パイロットには自分を客観視することや細かい変化に気づくことが求められるので、経験を重ねる中でそのあたりはすごく成長しました。

私も副操縦士になったばかりの頃は自分のことで精一杯という感じでしたが、最近になって周りに気を配ることもできるようになった気がしています。

細かいことに気を配るのはこの仕事ではすごく大切ですよね。でも、家庭では細かくなりすぎないように気を付けています。

私もです。うちは小さい子どもがいるので、ちゃんと伝えないといけないことと自由にさせてやることの境目に関しては、まだ探り探りという感じですね。
――パイロットのやりがいや醍醐味について教えてください。

子どもの頃から乗り物が好きで、ゲームも車や飛行機を操縦するものばかりしていました。そんな自分がボーイング787の機長になって、広い空で60メートル以上もあるような機体を飛ばしている。そのダイナミックさを体感できるのはとても幸せなことで、パイロットの醍醐味だと思います。

同じ路線でもまったく同じフライトというのは絶対になくて、そこが空を飛ぶということの醍醐味だと思います。飛行ルートも決まっていませんし、毎回天候も違いますからね。でも、公共交通機関として定時性を意識してお客様を目的地に送り届けないといけない。そんな中で、例えば出発時刻が遅れたときに、遅れを取り戻すためにベストの飛行ルートや高度を機長と一緒に考えて、それがうまくいって定刻に目的地に着いた時などは、非常にやりがいを感じますね。

03 TOPIC / パイロットには特別な能力は不要
パイロットには
特別な能力は不要
――仕事以外で大切にしていることを教えてください。

しっかりリフレッシュして精神状態を健康に保つことです。具体的に言うと野球やテニス、ゴルフですね。会社の草野球チームに所属していて、他の航空会社のチームと試合をすることもあります。

私もストレスを溜めないように心がけています。あと、どうしても家に帰れない日が多くなるので、家族との時間を確保することを意識しています。

学生時代はスポーツに打ち込んでいて、自分と似た境遇の仲間と過ごすことが多かったのですが、今はバックグラウンドの全く異なる同期たちから日々刺激を受けています。価値観の違いに触れることで自分の考え方も柔軟になり、新たな視点に気づかされることで、世界がどんどん広がっていく感覚を楽しんでいます。

私は水泳を長くやってきたので、泳ぎに行くことが多いですね。あとは旅行です。訓練が始まると海外生活になるので、今のうちに国内旅行を楽しんでおこうと思っています。
――今後の目標や抱負を教えてください。

副操縦士や客室乗務員も含めて、すべての運航に携わる人のパフォーマンスを高めることが機長の役割だと考えているので、そのためにより質の高いアドバイスや雰囲気づくりができる機長になれたらと思っています。

まずは機長に昇格することです。そのために日々の運航の中で機長の皆さんからいろいろなことを吸収していきたいですね。あと、そろそろ若手ではなく中堅といわれるキャリアになるので、後輩の副操縦士や訓練生の役に立つことを伝えていくことも意識しています。

副操縦士になるために、とにかく訓練を頑張りたいですね。しんどいことやつらいことはあると思いますが、自分の成長を楽しみながら取り組みたいので、少し余裕が持てればと思っています。

私も同じく、まずは副操縦士任用ですね。フライトで信頼してもらえるように、目の前の訓練に誠実に取り組んでいきます。
――最後に、パイロットの仕事に興味を持っている学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

私自身は特に秀でた能力があるとは思っていなくて、自社養成パイロットの試験も受かるとは思っていませんでした。でも運良く合格して、こうして機長になって思うのは、パイロットという仕事において特別な能力は要求されていないということです。自分が普通の人間だと思っている人こそチャンスがあるのではないかと思っているので、ぜひ挑戦してみてほしいですね。

パイロットになるには長い訓練が必要で、海外で訓練することもあるので、不安は皆さんあるでしょう。でも、パイロットになりたいという気持ちがある方は、ぜひ自分の可能性を信じて挑戦してもらいたいと思います。

就職活動をしているとうまくいかないことも多くあって、私が新卒の時にANAの自社養成パイロットの募集がなかったように、外的要因で夢がかなわないこともあると思います。でも、回り道をしても無駄になることはなくて、自分の糧になってくれるはずなので、意志を強く持って頑張ってほしいなと思います。

私は新卒時代にANAの自社養成パイロットの試験を受けたのですが縁がなく、航空大学校も受験したのですが不合格でした。自分には無理かなという気持ちもあって悩んだのですが、ラストチャンスだと思って応募したら合格することができました。ですから、パイロットになりたいという気持ちが少しでもあれば、迷いがあってもまずは挑戦してみてほしいと思います。
